愛媛県 西条市には、江戸時代から続く「西条祭り」というお祭りがある。市内の各地区にある約150台の屋台(だんじり、御輿、太鼓台)が奉納される。地元で愛されているお祭りで、西条に住んでいる多くの人が参加するため、祭りの期間中は会社や学校が休みになったり、県外に住んでいる人も仕事を休み帰省をする人もいる。屋台にたくさんの提灯が吊るされ、提灯に灯りを灯すと幻想的な雰囲気になる。         
提灯を選んだ理由

今回の課題「室内空間を彩るもの」というテーマに対して、私は、室内にあることで安らいだり、心地良さが感じられるものを制作したいと考えた。昔から使われていて、温かみのある「提灯」に惹かれるようになった。そこで、屋台の重要な引き立て役である提灯を作る「伊予提灯工房」を訪ねた。          
祭り提灯の制作過程

①木枠組み 
木型を組み、火袋(提灯の和紙の部分)の形の土台を作る。
木型

木型に溝があり、螺旋状に彫られている。この溝に、紙を巻いたワイヤーや、竹籤が巻かれる。また、人工漆のカシューが塗られており、提灯の火袋が完成した後、貼っていた和紙を剥がしやすいように工夫がされている。昔は、カシューではなく、漆が塗られていたそうだ。


②骨掛け
木型に合わせ、紙を巻いたワイヤーで骨組みをつくる。
③糸かけ
提灯の形をしっかりと保つために、糸を骨に巻きつける。
④和紙貼り
木型に巻いた骨に刷毛で糊を塗り、水で濡らした和紙を張る。
裏和紙 
提灯の持ち(寿命)を良くさせたり、提灯が伸びないようにするため、和紙の火袋と鉢の接続部分に、裏から補強用の和紙を4箇所貼っている。


⑤余分な和紙を切る
提灯は一枚の和紙を張っているように見えるが、糸目にあわせて分割して張っている。和紙が糸目からはみ出している部分を切り、どの提灯も一枚の紙で張ったように美しく仕上げていく。
⑥木型を外す
木型を入れたまま糊が乾くまで乾燥させ、乾燥したら火袋から木型を外す。
⑦文字描き 

火袋に文字や図柄を手書きで描く。
墨へのこだわり
多くの提灯屋では文字を描く際に、墨ではなく、黒い絵の具や塗料が使用されるようになってきている。このようなもので書かれた提灯は、手間がかからないが長持ちしない。文字の部分が破れてやすくなってしまうからだ。この工房では、「削り墨」という原料を仕入れ、昔ながらの墨で書かれている。墨特有の光沢があり、丈夫で長持ちする。


⑧火袋を畳む
火袋に文字や図柄全て描き終えた後、火袋が綺麗に畳めるように折り目を付ける。
⑨火袋の油引き

屋外では夜露や雨にあたるため、防水対策として、亜麻仁油や桐油等を混合した提灯専用の油を作り、火袋に薄く塗る。油を塗ることで薄い黄色になり、屋台の木の色合いと馴染む。提灯に火を灯すと、灯りが和紙を通し、より美しく見える。
(写真の左側が油引きの提灯)
⑩油引き後の乾燥

油引きをした火袋を自然乾燥させる。
組み立てと仕上げ

火袋完成後、提灯の形に組み立てる。上下の黒い側(化粧輪)を火袋に取り付ける。
角度や見え方など調整を行い、提灯が完成する。
 今後の制作に向けて


提灯を美しく見せるために、油引きがされていたり墨で書くなど、どの工程もこだわって制作していることが分かり、印象に強く残った。課題の「室内空間を彩るもの」では、提灯の火袋の形や、骨かけや糸かけの作り方を活かした、天井から吊り下げるランプシェードを作りたい。また、素材として使われていた和紙を使い、階段や玄関に置くフットライトを制作したい。和紙の様々な厚さや色、素材も試してみたい。

2021    koyama ria

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